粗大ごみが家の中にたまる体験談

「割れた窓ガラスの論理」というものがあります。これは誰かが石を投げて窓ガラスを一枚割ると、真似をする者が次々と出て、そこにある窓ガラスが全部たたき割られるという出来事を指します。
それを私に教えてくれた友人は、一度建物が傷み始めると、あとは一気にとどめが刺された格好になる、とも言いました。
そんな彼が聞かせてくれた話の中に、恐ろしい体験談が一つありました。それを紹介します。

町工場の転機

古工場
彼が住む家の近所に、元からあまり立派ではない家が、一軒ありました。
個人宅を町工場にしているようなところで、近づくと微かな機械音がし、機械油特有の、つんとした臭いが鼻についたそうです。
そこは父親が社長兼工場長で、奥さんや息子さんがその手伝いをしていたそうです。あまり話すこともなかったので、そこは朧気だと彼は言います。
そこに悪い意味で転機が訪れたのは、その社長と工場長を兼任している父親が亡くなったときでした。

投げ込まれる粗大ごみ

仕事に必要とされる技術を持っていたのは、その父親だけで、残された奥さんや息子さんではどうにもならず、工場を閉鎖することになったそうです。
そして工場を閉めたとたん、なぜかその家に粗大ごみが投げ込まれるようになりました。壊れた炊飯器、針が取れた目覚まし時計、スイッチが外れかけているテレビなど、どこからこんなものを持ち込んだのだと言いたくなるようなものが、玄関先に置かれたりするようになりました。

さてそうなると、真似をする人たちが出てきます。彼らは夜中だか家人が留守だかの間を狙って、玄関先や庭の中に、好きなものを放り込んでいくのです。
一枚でも窓ガラスが割られて、それを放置していると、残りが全滅するという理論の正しさが、それを見ているだけで分かる有様だった、と彼は言います。
もちろん、家人はそれを片付けていましたが、犯人は不特定多数で見当がつかず、警察も人が死んでいる訳ではないので、まともに取り扱ってくれないとあれば、限界があります。
父親が死んで、気落ちしていたのもあったのでしょう。あるときとうとう彼らは出て行き、そこは粗大ごみで埋め尽くされた無人家になりました。
そしてそうなると、ますますごみの不法投棄が続き、その家はいつしか近隣からごみ屋敷を通り越してお化け屋敷扱いされるようになりました。
古い機械が夜中だけは誰もいないのに動いているとか、亡くなった父親の幽霊が出るだの、勝手な噂が流れていました。

粗大ごみが引き起こした、ホラーより怖い事実

しかし、全ての原因は、最初に投げ込まれた粗大ごみであり、あれがなければ、その家はそんなに荒まずに済んだはずなのです。「些細な気持から捨てたものが、そこを徹底的に荒らすことがある」と彼は言います。
今ではそこは更地になったそうですが、ちゃちなホラーよりも怖い事実があるものだと、私は思わされました。