空き家の粗大ごみ片付け体験談

粗大ごみと言いますと、もうどうにも修復しようのない、壊れた家電製品や家具という印象があります。
これは大掃除や引っ越しなどの際、不要になったものを処分した経験に基づいた発想です。どれだけ大切にしていてもものはやがて壊れるのですから、無理もありません。
しかし、まったく壊れていなくても、ものがごみとして廃棄されることはあります。それは贅沢を理由にしたものではなく、ある種の寂寥感をはらんだものでした。以下に私の体験談を記します。

不思議な依頼

そのとき、私は大型の連休の最中で、うちの中でゴロゴロとしていました。どこかに出かけるでもなく、本を読んだりゲームをしたりして、時間をつぶしていたのです。
そんなとき、私の学生時代の友人から連絡がありました。 彼は仕事で個人宅の中の片付けをすることになったのだが、風邪を引いたやつがいて人数が足りなくなったから、手伝ってくれないかと言ってきました。
私は以前に彼の会社で、いわゆるごみ屋敷の片付けを手伝ったことがあるため、今回もまたそれかなと思いました。社会問題の一つと直に触れ合うというのも、暇つぶしとしてはありでしょう。
私が電話口で思ったことを話すと、今回はそんなに散らかっている訳ではないのだ、と彼は言います。
どういう訳なのだろう、と私は不思議な気分になりましたが、ともかく参加する旨を伝えました。日当は小遣いになるし、好奇心を刺激されたからです。

外観も屋内も、普通の家

指定された現場に行ってみますと、そこは外観からしても普通の家でした。人数も、以前行ったことのあるごみ屋敷と比べても少なく、本当に欠員が少し出たから補充しただけ、という感じです。
それでも、私は案外中はすごいことになっているのではないか、と身構えていました。しかし、屋内に足を踏み入れてみると、言われたとおり、そんなに散らかっておらず、普通の家でした。
ごみとして廃棄するのだという家電製品や家具も、僅かにホコリをかぶっていましたが、まだ充分使えそうです。何で纏めて廃棄せねばならないのかと、私は気になりましたが、仕事中に私語をするのも気が引け、終わってから聞いてみようと思いました。

持ち主不在の道具は粗大ごみ

そして仕事が終わり、今日片付けた家に何があったのかと彼に尋ねてみると、何でも一人暮らしの老人が急に倒れて、そのまま亡くなってしまったそうなのです。そして、その老人の身内が家を引き継ぐことになったそうで、家の中のものの処分を依頼してきたのだと、彼は言います。
成程、と私は得心がいきました。まだ使える道具でも、それを必要とした持ち主がいなくなれば、粗大ごみになるのです。
やるせないと言えましたが、同時に仕方がないとも感じました。